『Yoshida』では大変お世話になりました。
このお店のホームページは
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吉田美香
ginzayoshida


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『その名は美月』

銀座では毎夜、女性達の愛と欲と偽りの世界が踊りだす。
この物語は美月という数奇な運命に翻弄されながらも
したたかに生きて銀座でも長い間お店を続けてきた
実在するママの物語です。

*この作品の人物、会社名、店名等はフィクションです。
実在の人物や団体などとは関係ありません。

【第2話】
■誕生
『美月ちゃんお疲れさまぁ~。今日はどうだったぁ』
とママが美月にそっと近づいて猫撫で声で囁いた。
ママの思惑は美月の獲得に相違なかった。
美月が事務員として面接に来た時からこの子はこの夜の世界で名を残す位の何かを持っていると直感で感じていた。
まだ原石かもしれないけれど磨きがいがあるとどうしてもお店で働いて欲しかった。
『そうですねぇ、思ってた程大変じゃなかったです』
『そう、そう、それじゃもう少しだけ働いてみる?』
『そうですねぇ・・・。』
と美月は躊躇した。仕事は楽しかったしこんな仕事でお給料を貰えるなんて楽かもしれないと思ったが
その時はまだホステスという職業に偏見と渡ってはいけない川があるような気がした。
『お給料も今の倍にするから美月ちゃん考えてみてよ』
『ええ!倍ですか!』
倍と聞いて急に川に黄金の橋がかかって渡ってみようかと思った。
『ママさん、私働いてみます!』と思わず言ってしまった。
『わぁ、嬉しいわぁ、分からない事は私が教えるし店長にも頼んであげるからね。大丈夫よ。
それからそのママさんはなしね。ママだけでいいのよ』
『はい、宜しくお願いします』
なんて単純なのかと思ったが当時実家から独立したかったのでお金が欲しかったのだ。
そして冷静になってからひとつ問題があるのに気がついた。
その店長がなんとあの鬼塚(本当は大塚さん)と言われるくらい厳しくみんなから恐れられている。
聞いた話しによるとお客様と同伴で何分か遅れただけで店中に響くぐらいな大きな声で
『今、何時だと思ってるんだ!』
って叱られたと聞いたことがある。そんな人、なんだか怖い。

『おはよう!』
『あっ!おはようございます。よろしくお願いします』
いきなり鬼塚だぁ)
『ママから聞いてると思うけどうちは厳しから覚悟しておいてくれ』
『はい!』
『じゃ、注意事項をいくつか』
『まず禁止事項!』
『あっ、はい!』(威圧感バリバリ)
『遅刻は厳禁!人間として守らなきゃいかん』
(少し大袈裟じゃないの?)
『次!足組んだり肘をテーブルについてもダメだ!そんなのを見たら客の前でも注意するからな』
(すごっ体育会系!)
『次!客の前でつまみは食べるな』
(客!客!って店長のほうが態度悪い!)
『おい!聞いてんのか』
『はぁ、聞いてます』
『次!』(まだあるの?)
『同伴は8時半まで。1分でも遅刻したら給料から引くからな』
(はいはいわかりましたよ)
『次!』
(えぇー)こんな調子で延々注意事項が続いた。
夜の世界も見た目ほど楽じゃないのね。

この『クラブ風花』は駅から1分という好立地にあり大きなビルの2階。
階段にも装飾が施されお客様の期待感を盛り上げる。
80坪という広い店内は毎日、洪水のようにお客様が来店され賑わっている。
そして生バントの音楽と共に夜毎、在席50人程の女たちの戦場でもあった。
まず入口に入るとフロント兼キャッシャーがあり左右の入口に分かれている。
左は川上チーフのいるカウンター席でどっしりとした革張りの椅子はかなりの幅があり、この高級感がお客様の優越感を満足させるようだ。
毎回このカウンター席を指定する人もいるくらい居心地がいい。
その奥は調理場でシェフがクラブとは思えない程の本格的な料理を作っている。
フロントから右へ行くともうそこは現実から遠い、甘美な世界へと続いている。
大きなフロアーにはテーブル席が贅沢な距離間で配置されステージには5人編成のバントが豊富なジャンルの音楽をBGMとして奏でている。
そして一番奥まった席はVIP席と呼んでいて邪魔にならないほどの目隠があり重要人物の接待用に使われている。
狭い町なので顔を合わせると支障があるのかもしれない。
その他、女子用のロッカールームがあり各ロッカーも完備されていて
着替えやお化粧直しもできる。

こうして美月のクラブデビューは始まったのです。
【第1話】
■体験入店
ある地方銀行に勤めていた内気な女の子がいました。
出納係りという少し特殊な部署のため毎日現金との戦いで
当時市内全部の公衆電話の10円を数えるのが彼女の仕事でした。
来る日も来る日も重い麻袋から両替機に入れ気の遠くなる単純な仕事でした。
『私このままでいいのかなぁ・・・』とふと感じた疑問が日を増すごとに大きくなって
体重は半年で10キロ減!ダイエットもしてないのにご飯が食べられない日々。
銀行へ行くと建物がくるくると回ってしまい立てない状態にもなって
最悪な体調になってしまった。
それはうつ状態の一歩手前だったかもしれない。
銀行の健康診断でこんな急激に痩せるのは何処かが悪いかもしれないと
再検査をしたけれどどこも悪くはなかったのだが
心の声が環境を変えないと取り返しがつかないことになると言っていた。
その頃から不思議な声が頭の斜め後ろから聞こえるようになっていた。
でもこんな事を言っても誰も信じて貰えないからそれは自分だけの秘密にしていた。
その声の言う通りこのまま続けたらきっと大変なことになると
親にも相談しないで銀行は辞めてしまった。
後からその事を伝えると散々叱られたのは言うまでもなかったが
自分の体の問題なのでと納得して貰った。
その頃、彼女は親と同居していたが
父親が再婚したばかりで新しい母親とは完全に距離があった。
家でも確執があって緊張感が半端じゃない毎日にどうにかなりそうだった。

そんなある日
友人から市内でも最大のクラブで事務員を募集していると紹介してもらったのはいいけれど
スナックも行ったことがなくてお酒も飲んだことがない子が
そんな大きなクラブの事務員が出来るのか不安しかなかった。
でもクラブで働く訳ではなく事務員なので何とかなると勇気をだしてそのクラブへと足を踏み入れた。
今から思うとそれがその後の運命を決めた第1歩だった。
そこは大きいクラブでホステスさんだけでも50人位はいて
生バンドも入っていてそれはそれは豪華絢爛で見たこともない世界で眩しいほどだった。
そのお店の裏の方に事務室があって毎日朝から夕方まで勤めることが決まった。

そうこうしているある日
ママさんがお願いがあるといきなり事務室に入ってきて彼女の顔をまじまじと見た。
『今日、女の子が3人も休みで美月ちゃんお店手伝ってくれないかしらぁ~すごく困っているの』
『えええ!私がですか?お洋服もないし無理ですよ』
『大丈夫よ。私の貸してあげるから』
『それじゃ今日だけですよ私事務員なんですから』
と好奇心もあって軽く引き受けてしまった。
その頃になると少しづつお店の雰囲気にもなれて怖さは何処かにいってしまっていた。

そしてその夜
貸してもらったのがショッキングピンクのロングドレス!
いきなり変身してママさんにお化粧もしてもらいもうりっぱなクラブの女性誕生の瞬間だった。
『ターさん今日から入った美月ちゃんです。ピカピカの新人よ宜しくねぇ』
『・・・今晩は』(手が震えてる)(でも何か楽しい)(もしかしたら私)(この仕事好きかも)
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